研究概要

[研究交流目標]

 現代の医療において、病態・病因のナノスケールでの理解、根拠に基づく精密診断、安全かつ先端的・効果的治療の実現が重要とされる。東京大学では、2005年に設立した東京大学ナノバイオ・インテグレーション研究拠点(CNBI)などを通じて、生体内での営みをナノレベルで理解し、疾患の診断・治療などに応用できるナノデバイス・ナノマシンを構築することによって、先端的な医療の実現を目指すナノバイオ研究を精力的に推進し、特に光を用いた診断技術やナノDDS研究で世界をリードする研究成果を挙げ続けてきた。そこで本研究では、個々の患者の病態の精密光診断と根拠に基づいたテーラーメイド医療を融合させた先端医療技術(フォトテラノスティクス(phototheranostics))の実現に向けた検討を行う。東京大学が先導してきたナノバイオ研究で見出された素要素技術を融合し、実医療に昇華させる本研究は、今後10年の医療技術開発における、日本(東大)が主導し、世界を牽引する重要な研究分野と期待され、東京大学をハブとした国内外のネットワークの構築が重要であると考えられる。そのために本計画では、先端医療技術開発分野で豊富な実績を有する各国の研究機関との提携によって臨床研究を加速すると共に、国内若手研究者との連携によって国際的な情報発信力を持つ次世代研究者、医療従事者を多く育成し、日本発の素要素技術が、我が国の人材によって、実医療に昇華する道筋を作り、我が国の先端医療技術開発の長期的な発展、国際競争力向上に向けた基盤強化に繋げる。

[研究交流計画の概要]

共同研究の推進>
先端医療技術の開発には、素要素技術の開発と、それを融合させ実医療に昇華させる研究が必要である。本計画のコーディネーター、日本側参加研究者は、これまでイメージング(浦野:トロント大学、EPFL)、再生医療(鄭、高戸:ハーバード大学・MGH)、がん診断(入村:テキサス大学MDアンダーソン癌センター(UTMDACC))、臨床イメージング(一條:ケンブリッジ大学)、ドラッグデリバリーシステム(DDS)(片岡、宮田、Cabral:LMU)、バイオマテリアル(石原:クレムゾン大学)など、豊富な海外共同研究実績を有する。本計画では、活発な研究者・学生の交流により、共同研究をさらに進展させると共に、その成果の横断的な共有、相互利用を推進する枠組みを国際的に構築し、フォトテラノスティクス分野の研究と教育で世界を牽引する国際ネットワークを構築する。
 
研究成果の発信
年1回の合同シンポジウムを持ち回りで開催し、各拠点が開発した素要素技術を持ち寄り、実医療に昇華させる筋道を計画し、今後の共同研究の進め方について議論する。毎年、合同シンポジウムで各研究の進捗状況を発表し、その後の研究の進め方について、情報を共有する。さらに素要素技術が新たに開発される都度、紹介し、実医療に昇華させるために必要な研究について情報交換をするネットワークを構築する。また、シンポジウム以外にも、研究者の相互訪問を通して、定期的に情報交換を行う。その際は、それぞれ現地でセミナーを開催し、常に問題意識を共有できる体制を整備する。
 
国際的視野を備えた次世代人材の育成 
本プログラムでは、共同研究のために若手研究者を2ヶ月程度相手国機関に派遣、もしくは相手国機関から受け入れる予定(各10名程度/年を計画)である。また、合同シンポジウムの際には、参加者を若手研究者に限定したワークショップを企画することで、若手同士の交流を促進し、国際感覚を兼ね備えた研究者を育成すると共に、本プログラムで構築するネットワークが長年引き継がれるようにする。テレビ会議システム等を利用することで、日本にいながら相手国機関と日常的に交流を行う機会を設ける。