生体システムは極めて複雑な化学反応のネットワークにより成り立っており、その中で機能する小分子・ナノテクノロジーの創生には、基礎となる化学反応や生体系構成因子の物理化学的性質を定量的に理解しコントロールすることが不可欠である。 こうした課題を克服すべく、量子化学計算や分子シミュレーションを用いた物理モデルの構築・機械学習を取り入れた未解明現象の解析を積極的に行っている。 In silicoにおいて考案したモデルや仮説を化学・生物によって迅速に検証していくことで望みの機能性分子を開発する「応用研究」とそれを実現するための理論体系を構築する「基礎研究」の両軸を同時に推進することを目指している。
量子化学計算を用いた蛍光プローブの化学平衡解析により、任意の骨格における蛍光のpH依存性を予測することを可能とした。 これを用いて、合成・物性測定の試行錯誤を行うことなくコンピュータ上の検討のみを用いて新規赤色peptidaseプローブを理論的に開発することに成功した。 開発された蛍光プローブは当研究グループを中心に、さらなるがん研究に応用されている。
少量のデータから始め、新規データを取得する価値の高い点を機械学習によって見積もりながらデータの取得と学習による予測を繰り返し、 データセットの質を効率的に高めると同時に目標達成に近づくAI型実験計画法の開発を行っている。 因果探索法とベイズ最適化における獲得関数による評価を組み合わせ、科学的に理解可能な学習モデルを対話的に導くことを目指す。 これを用いて、機能性小分子やドラッグデリバリーシステムへの応用を見据えた小分子輸送系の論理的デザイン法の構築を行う。
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